医療従事者も認知し始めた温熱療法

日常的な生活の中で溜まる、肉体的、精神的ストレスは、身体を不調にさせてしまう。例えば冷え、肩こり、首こり、腰痛、頭痛、疲労感、不安感にいたるまで、数かぎりない症状をまとめて、その人個人が感じる不調といってもいいだろう。「不調に効く」とうたう民間療法は、それこそ数限りなく存在している。

 

その中でも今、あらゆる不調に効果があると注目されているのが「温熱療法」だ。それは「身体を温めると、~に効く」「体温が上がると免疫力が上がる」などの情報が医療従事者の口から発せられ、メディアや書籍で広くとりあげられるようになったからだろう。古くから「冷えは万病のもと」と伝えられてきた所以もあるだろうか。医療従事者で「身体を温めること」を否定する人はあまりいない。

温めるだけでも効果が出てしまう
しかし、それと同じではない

認知が高まる一方で、「温熱療法」と呼ばれるものは多数存在している。それこそ「癒しレベル」から「治療レベル」まで幅広く存在するため、本質を見極められずどれを選んでいいのかわからないというのが現状である。

 

  • 「温熱って身体を温めることでしょう?」
  • 「それで、温めたらどうなるの?」
  • 「知ってるよ! 温めると血液の流れがよくなるんだよね」

 

ごく一般の方たちが抱いている「温熱療法」の認識はこんなところだろう。まだはっきりとした病気ではない不調は、身体を温めるだけでとても楽になることが多い。なぜ楽になるのだろうか?

 

まず、身体がほんわかと温まることが嫌いな人はいない。冷えを感じている人が多いからなのか、本能で温かい感覚を好むからなのかは定かではないが、温められることによってあらためて自分の冷えを実感するなんてことも珍しくない。「温かい刺激」はとても心地がいいのだ。あえてその仕組みを説明するならこうだ。まず、心地よい温かさが一定時間続くと身体の中の「副交感神経」が働き出す。この神経が優位に働くことで縮まっていた血管が弛み、血行が促進され、胃や腸といった消化器がとてもよい具合に働いてくれるようになる。その結果、少しくらいの肩こりや腰の痛みなどが楽になる。少し温めるだけでこうした現象を体感できた人は「温熱療法はいいものだ!」と思うに違いない。しかし今回紐解く「高温熱刺激療法」は、これらのものとは全く異質の温熱療法であるということを、まずはご理解いただきたい。

 

「ぽかぽか温めるだけじゃない温熱療法こそがもっといいものだ!」ということを多くの方に知っていただきたいという一心である。

すでに病気だからとにかく温めればいいんだ!
答えはノー

温泉などに行くと脱衣場に禁忌事項が記されていることがある。要するに「こんなときは温泉に入っちゃダメよ」もっとわかりやすくいうと「温めちゃダメ!」と記されているのである。なるほど。「急性疾患」などと呼ばれる症状は発熱や炎症をともなうし、「悪性腫瘍」は細胞分裂が止まらない白血病や悪性リンパ腫を含めた癌のことだ。「えっ、心臓や腎臓に問題がある人は温泉には入らない方がいいってこと!?」

 

・・・とまあこんな風に考えが及んでしまうようなことがたくさん書かれている。当然「じゃあ、なぜ書いてあるの?」ということになるのだが、これにはやはり理由がある。「急性」が意味する「急性期」には身体の中で盛んに代謝が行われている。

 

代謝というと食物の代謝の方を思い浮かべがちだがそれだけではない。私たちの身体をつくっている細胞はおよそ60兆個といわれているが、その細胞の活動を総じて代謝と考えてよい。

 

急性疾患の状態で38℃以上の発熱を帯びたり、また捻挫や骨折すると、細胞はたちまち盛んに代謝を速める。

 

このとき白血球という免疫細胞が必ず活動をはじめるのだが、その白血球が元気に働くためには「平熱以上の体温」が必要なのだ。

 

風邪をひいて熱が出るのは白血球が動くために必要な事象であり、捻挫や骨折の場合は組織そのものが壊れているためそれを修復させるためにはやはり平熱以上の熱が必要となる。熱を上げるのは必要なことだけれども、それには「痛み」や「だるさ」などの不快な症状が必ずつきまとうわけである。そしてここが肝心なところで、熱が上がりすぎると修復よりも破壊の方が多くなってしまうことがある適度な熱は絶対必要! 不必要な熱は不要、なのだ。したがって、こうした病気の状態で入る温泉は「適度に身体を温める」ことにはならない。そもそも何をもって「適度」かを判断できないので、結果が良い方に転ぶこともあればそれこそ、温まりすぎて具合が悪くなってしまったりもする。

 

良い方に転んだ人は「温泉最高!」となるだろうし、悪い方に転んだ人は「温泉はやばい!」となり、良し悪しもまちまちになってくるのである。一般的には、前述した症状や疾患がある場合、温泉はやめたほうがよい。こうした医学的な見地からも「温めるだけの温熱療法」は推奨されていないばかりか、「温めてはならない」と考えられているのである。さて、徐々に本質に迫ってきたところでもう一度おさらいしておこう。

 

  • テレビで「温熱療法」がいいって聞いたんだ!
  • 冷えは万病の元だしいろんな温熱療法を試してみよう!
  • 温かいのは理屈ぬきで心地良いよね・・・。
  • (もともと健康優良な人が)温めるだけで効果を実感できた! やっぱり温熱スゴイ!
  • 病気やケガをしてしまった・・・。そんなときこそ温熱療法だ!

 

勘のよい方はすでにお気付きかと思います。

そう、こうして「温熱療法」の本来の効果や使途が異なって伝播してしまっているのである。

自律神経バランスの崩れにどう対処するか

私たちの身体には、自律神経系という神経の網がすみずみまで張り巡らされているのはご存知でしょうか。

 

消化や栄養素の吸収、毒素の分解や排泄、睡眠や覚醒etc…

 

これらのように私たちの日常生活に直結し、さまざまな体内活動を自律的におこなう生命線ともいえる神経系だ。

 

昨今では入門者にもわかりやすい書籍やインターネットで閲覧できる情報も多いため、自律神経系が「交感神経」と「副交感神経」の両方で成り立っていることくらいはご存じの方も少なくないだろう。

 

実はこの交感神経と副交感神経、非常に微妙なバランスの上で機能しており、そのバランスが崩れてしまうと大変なことになる。

 

だから崩れが一定以上をこえてしまうことがないよう、脳を含めた体内で、常に微調整が行われている。つまりは「私たちの不調はその微調整の崩れから発生する」ということなのだ。

 

いわゆる「健康」と自覚できている人はこの微調整がうまく行われている人、と言っていいだろう。逆にいえば「精神的または肉体的ストレスで微調整が崩れた人は不調を抱える」のである。自律神経バランスの崩れに気付かない、または、自覚しているが対症療法的に解決することを続ければいよいよ本当の病気になることだってある。(病気の根本的な原因が自律神経の崩れだけで起きるものだと述べているわけではない)しかしながら、人間の健康維持にあたっては「神経系」「内分泌系」「免疫系」が大きな影響を及ぼしていることは確かだと思う。事実、現代医学において最も不得意な分野は、「神経系」「内分泌系」「免疫系」から発する症状ではないだろうか。

 

そして「難しい病気」のほとんどは、この3つの系統の不具合に端を発することが多い。

自律神経系に直接アプローチする高温熱刺激療法

まずお伝えしておく。

 

温熱療法といえど、43℃以上の高温熱刺激による温熱療法は身体を温めることを主旨とはしていない。

 

しかし、自律神経を刺激して起こる反射反応の副産物として「温かくて心地よい・・・」という充足感を得られることは言うまでもありません。

 

高温熱刺激療法は「体性自律神経反射」という生理学を基にした治療法で、皮膚を43℃以上の温度で刺激することによって、直接自律神経系を操作できる極めて効率的な温熱療法である。

 

古くから自律神経系と皮膚の関係においては生理学的な研究が進められており、その重要さ、相関関係ははっきりしている。

 

その重要な相関関係とは「神経系」「内分泌系」「免疫系」の自律神経支配である。

 

このように皮膚と内蔵、この場合「あらゆる細胞」と言っていいかもしれない。これらは神経系を介して「つながっている」また、高温熱刺激療法で用いる43℃という温度は実に絶妙な温度で、布ごしで皮膚に当てたときに悪いところはとても熱く感じ、そうでないところはそれほど熱く感じない。熱く感じるところ=自律神経反射により「ここのバランスが崩れている」ということを教えてくれているのだ。私たちはその熱く感じるところを精密に探し出し、そこに有効な熱刺激を与え、「不調和を起こした部分のみをねらって」作用させている。これこそが私たちの考える「温熱療法」であり、己が追求すべき・世に提供すべき「高温熱刺激療法」なのである。

徳山 聖徳
とくやま まさのり

1970年生まれ。柔道整復師。三井温熱療法師。現場現役ながらも執筆活動や後進の育成に励む。施療実績に裏打ちされた論理の展開や独特の語り口から、国内・海外に多くのファンをもつ高温熱刺激療法のスペシャリスト。株式会社三井温熱ケアシステム浅草店・所長